241214「得意だったことを思い出す」



学校や仕事で忙しくなると、好きなことや得意なことに充てられる時間が失われる。

目の前のことに集中するがあまり、自分にとっての休息がスマホをいじることや寝ること、食べることといった即席的な内容に集約されてしまう。

自由な時間を有意義なものとする趣味や特技は忘れ去られる。

子供の頃にあれだけ弾けていたピアノはもうおそらくぎこちなくなっているだろう。

楽器の演奏は1日休むと3日分下手になるといわれるほど継続が命だ。

得意なことはそういった身体による記憶やクセ、勘が上手く作用している。

だからこそ、経験を積み、理屈を学んで脳が記憶していても長期間放置された技術は鈍り、ついには「得意だった」ことになる。

自分しか持っていない最強の武器も手入れを怠ればただの置物と化する。

いざ人前で自慢しようにもそれを扱える自信がないし、そもそも見せられるクオリティをとっくに下回っている。

幼稚で弱い武器であっても定期的なメンテを欠かしてはいけない。

できないことややりたくないことで日常が圧迫される中、自分の魅力も尊重し火を灯し続ける必要がある。

そうして暗中模索するうちに目の前の課題と得意な(だった)ことが止揚して、その人の個性や魅力を深める。

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苦手なことやできないことは外部からの刺激で認知しやすいが、内側の能力は自分しか知り得ない。

厭世的な考えで自分の傷を広げず、多少は改善の姿勢を意識しつつも、できることへの鍛錬も同時に少しずつ、バランスよく行うことが前向きに生きるための糸口となるのではなかろうか。

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